ブラジルはいまや、サーフィンのメッカである。
ここ10年で、サーフィンの世界大会でブラジル人が上位を独占することも増えてきた。それくらいブラジルの波は良いのだ。
そんなこともあり、とある日にブラジルのサルバドールに立ち寄った際、せっかくだからサーフィンをしようと思った。
黒いローマという異名を持つ古都の街並みが美しいサルバドールにも、サーフタウンという側面がある。
サルバドールのとある小さな町に着いた日、真っ先にビーチに向かう道中で、サーフボードを持っている青年に出会った。
「サーフィンしてきたの?」と英語で尋ねたら、「そうだ」という。この先のビーチでサーフィンをしてきたとのことだった。
その時、彼が「どこからきたの?」と聞いてきたので、私は「日本だよ」と答えた。
そうしたら、彼は嬉しそうな顔つきで、「僕はsakaiというんだ」と言った。
一瞬分けがわからず困惑したのだが、詳しく聞いてみるとどうやら日系4世とのことだった。
世界は広いのか、狭いのか。
たしかに、彼の優しそうな顔からは日本人の面影がかすかに感じられる。
100年以上前、地球の反対側へ旅立った彼の先祖に深い敬意を表すと同時に、sakaiという名前を彼が今も名乗っていることに対して、なんとも言えない嬉しさを感じていた。
その夜、彼が彼の母親とともに、私が泊まっている宿に尋ねてきたので、みんなで軽く雑談をした。
人と人との邂逅こそが旅の醍醐味だ、と痛感した瞬間だった。